青空を渡さない会

土壌汚染問題
工場跡地であるマンション計画地内の土壌汚染の問題について
近隣住民が求めること
本件マンション計画地の土壌汚染調査に関し、建築主は、
①第1次及び第2次の土壌汚染調査の方法
②第1次調査の結果及び第2次調査の結果
③土壌汚染範囲の土砂の除去方法に関しての各説明会
を、洋光台三丁目町内会館において実施し、近隣住民、周辺住民及び町内会の理解を得ること。
即ち、建築主は、開発事業者として、土壌汚染に関する近隣住民への説明責任を果たすこと。
現状は、建築主が一方的に難解な紙資料を配布するのみで住民への説明を了とし、理解を得るための説明責任を放棄していることから、その対応を改めること。
参考:土壌汚染の対象物質(トリクロロエチレン)
昭和30年代から40年代当時、トリクロロエチレンは、まだ規制対象物質ではなかったため、野放図に使用され、排液は垂れ流し状態であった。しかし、現在では、
①発がん性
②急性毒性(皮膚や粘膜、麻酔作用)
③慢性毒性(肝臓や腎臓障害)
を引き起こすものとして認識され、規制対象物質になっている。
土壌汚染対策法においても、トリクロロエチレンは、第1種特定有害物質として扱われ、工場排水から地中に浸透することから、土壌溶出量基準は0.01㎎/ℓ 以下と定められ、他の有害物質に比べて極めて厳しく監視されている。
事実関係及び問題点
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建築主が土地購入に至った経緯
(1)令和3年12月:三信住建(株)が旧地主より、約2,600㎡の土地を購入
(2)令和4年1月:FJネクスト(株)が、三信住建(株)からの土地譲渡を検討
(3)令和4年1月:FJネクスト(株)が、土壌汚染調査会社であるトーエイ環境(株)から、本件マンション計画地の地歴情報を入手
当時、FJネクスト(株)は、本件マンション計画地が工場跡地であったことを承知の上で土地購入の決定をしたことが、後に暴露された (後述の2の(5) ※注1)。
(4)令和4年2月:FJネクスト(株)が、土地の95%の持分を仮登記・取得
(5)令和5年3月:旧地主が、旧地主の居宅の家具などを移動させ明け渡し完了
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当初の説明会以降に、近隣住民が土壌汚染を指摘した際のFJネクストの対応
(1)令和5年5月31日及び6月3日に、本件マンション計画の住民への説明会が開催された。
6月3日の説明会の際、住民から、「知り合いの造園業者が、過去に旧地主の敷地内で池の築造工事を行った際、急激に身体の具合が悪くなった」ことを報告し、この敷地の中には有害物質がある可能性を示唆した。
(2)令和5年7月6日、住民代表がFJネクストに対し、質問書(その5)を送付した。
この質問書送付は、住民代表が、洋光台が開発される以前の旧矢部野町時代から居住していたことにより、計画敷地内の一角にレンズの研磨工場があったことを、鮮明に記憶していたことに起因する。
また、住民代表は前職の専門性から、職業性疾病に関する見識が豊富であり、昭和30年代から40年代のレンズの研磨作業においては、最終工程で、必ず加工中に付着した機械油などを脱脂洗浄する工程があることを知っていた。
従って、工場跡地である本件マンション計画地は、トリクロロエチレン等の有機溶剤により汚染されている蓋然性(可能性)が極めて高いことを、建築主FJネクストの開発責任者に、質問書などを通して指摘し、土壌汚染の調査を行うことを強く要請し続けた。
(3) 近隣住民は、具体的な資料(過去の論文・地図など)に基づき、
①令和5年7月6日の質問書を皮切りに、
②令和5年10月24日開催の説明会、
③その後の中高層建築物に関する条例に基づく2回の協議、
④開発事業計画の意見書及び再意見書の書簡
を通して、理路整然と予断なく指摘を継続した。
(4)上記の通り、近隣住民から再三の指摘があったにも拘わらず、建築主FJネクストの開発責任者は、土壌汚染調査会社による調査報告書内の、「レンズの調整を行う作業所が短期間存在していた。」、「有害物質の使用は確認されなかった。」との記載を唯一の拠り所に、頑なに、「特定有害物質が使用されていた明確性はないことから、土壌汚染の調査の必要性はない。」と、1年7カ月に渡り、逃避を続けた。
(5)土壌汚染に関する住民からの指摘から、1年7カ月余りが経過した令和7年1月14日、漸く説明会が再開され、そこに土壌汚染の調査報告書を作成したトーエイ環境(株)(環境省指定)の技術管理者も出席した。
近隣住民や、その説明会に同席してくださった太田市議から、矢継ぎ早に質問が投げかけられると、作成・配布された資料の虚偽が次々と明らかになった。
そして最終的には、トーエイ環境(株)の技術管理者が、「本件マンション計画地が工場跡地であることは、FJネクストの開発責任者が土地購入をする際に、伝達済みであった」と暴露するに至った(※注1)。
(6)その際、住民代表が、国立科学博物館の研究員による論文(「わが国の双眼鏡製造技術の発達史」、2008年発表)の中に、「(有)日正光学」 と称するレンズの研磨工場が旧矢部野町に存在したとする記載があることを提示し、更に、昭和30年代から40年代にかけてのレンズの研磨工程における有害物質の取扱状況に関する論文を提示して追及すると、トーエイ環境(株)の技術管理者は、本件マンション計画地内に有害物質を扱っていた工場が存在していた可能性が高いことを認めた。
それを受け、FJネクスト(株)の責任者が、「次回説明会において、土壌汚染の調査方法についての設計書を提示し、説明を行う」と約束し、説明会は終了した。
(7)ところが突然、令和7年2月1日に、建築主FJネクスト(株)の代理人と称する仁平総合法律事務所(横浜市中区所在)の代理人弁護士らから、「受任通知」なるものが近隣住民の各家庭に届き、その書面の中で、「土壌汚染調査に関する事前の説明会は、今後、一切行わない」旨の宣言がなされた。
そこで、近隣住民が代理人弁護士らに、FJネクスト(株)の開発責任者が上記(6)の通り、「次回説明会において、土壌汚染の調査方法についての設計書を提示し、説明を行うとしていた約束は、どうなるのか?」との質問書を送付したところ、代理人弁護士らからの回答は、「土壌汚染の調査は、念のために行うものであるから」、「住民の申出により行うものであるから」との前置きの後、「説明会を省略して、土壌汚染の調査を行う2週間前までに近隣住民宅に書面(設計書)のみを送付し、その通りに調査を行う」との内容であり、約束は反故にされたものであった。
即ち、専門的(特殊)な内容が記載された土壌汚染調査の設計書について、事業者側は住民への説明責任を果たさずに(1回目)、開発事業計画の周知の際に問題になった時と同様、一方的に難解な紙資料を配布するのみで住民への説明を了とし、土壌汚染の調査が強行されることとなった。
このような手法の連続では、近隣住民の不安が一切払拭されないことは、言うに及ばない。
なお、その書面(設計書)は、令和7年4月22日に代理人弁護士らから、レターパックで届いたものである。
調査は、令和7年5月14日及び15日の2日間で検体採取を行うとしていたが、実際は、5月14日の1日で試料採取は終了した。
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土壌汚染調査の結果(基準値の120倍の有害物質が検出)
令和7年5月14日に実施された土壌汚染調査の結果は、令和7年5月31日付の「土壌汚染調査結果」と称する資料送付により、代理人弁護士らから開示された。
すると、土壌汚染対策法に規定される第1種特定有害物質のトリクロロエチレンが、土壌溶出量基準である 0.01㎎/ℓ の120倍に当たる 1.2㎎/ℓ が検出された。検出された箇所は、正に、工場排水の始点であり、住民が指摘した(予想した)通りであった。
近隣住民は、約55年前の工場跡地に残存する特定有害物質の異常な数値に恐怖し、今後の第2次調査の進め方について大きな疑問を抱いたため、令和7年6月1日付けの書簡にて説明会の開催要請を代理人弁護士らに送付したが、6月3日付けの返信にて、「説明会を開催することは予定しておりません。」と説明責任から逃避する回答(2回目)を受け、かつ、第2次調査は6月5日及び6日に決行された。
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予想される建築主FJネクストの今後の対応
第2次土壌汚染の調査結果は、近日中に開示されると思われるが、又しても、一方的に難解な紙資料を配布するのみで住民への説明を了とし、素人である住民に対して、専門的・技術的な内容の説明を行わない可能性が極めて高い(3回目)。
同時に、今後は、汚染された土壌の除去作業が提案されるものと思料する。
そうなると、除去工事の期間の近隣住民への特定有害物質の暴露、即ち、健康被害が危惧される。
上記、第2次調査の結果報告の際と同様、建築主FJネクスト(株)は、除去工事の方法に関しても、住民対して資料の配布のみで説明を了とする懸念がある(4回目)。
建築主FJネクスト(株)は、代理人弁護士らをつけてまでして、住民に対して自ら提示した資料の説明責任から逃避し続けている。そもそも、開発事業を行う建築主は、近隣住民の不安を払拭させる義務があるにも拘わらず、この度の土壌汚染の調査に関して、当初から建築主FJネクスト(株)の開発責任者は、消極的な態度を一貫していた。
それにも関わらず、令和7年1月14日の説明会では、これまでの消極的な態度を一変させ、「土壌汚染の調査を行うことを英断した。」と宣言したものである。その背景には、「調査を行っても特定有害物質など出る筈がない」、「強行突破してでも開発事業計画の同意申請をいち早く取り付けたい」という、近隣住民からの指摘を過度に軽視する姿勢が根強くあったのではないか、と考えざるを得ない。
結果、住民が指摘し、懸念していた通り、特定有害物質が検出されたものである。
本件工事現場は、近隣住民の協力なしでは決して完成し得ない、悪条件の現場である。
協力を求める対象である近隣住民に対して、建築主が自ら提示した専門的・技術的資料の説明責任を4回も連続して果たさないなど、到底看過できない。
横浜市建築局及びみどり環境局への要請
宅地審査部の榊原部長は、令和7年5月30日の請願書審査において、「土壌汚染の調査は、開発事業の調整等に関する条例で定める項目に入っていない」、「任意の調査だから、市はこれ以上何もできない」旨の答弁をした。しかしながら、基準の120倍の土壌汚染が発覚した以上、そのような答弁では、横浜市民の命は守れない。
FJネクスト(株)が開発行為(土地の形質変更)を行う前に、榊原部長には、土壌汚染対策の担当部署である横浜市みどり環境局の土田環境保全部長及び百瀬水・土壌環境課長と適宜、情報交換を行いながら、建築主FJネクスト(株)に対して、汚染土壌の適切な調査方法及び除去作業についての指導、及び、事業者が説明責任を果たすための適切かつ強力な指導を行うことを、要請する。